かのん

シークレット・サンシャインのかのんのレビュー・感想・評価

3.7
韓国の地方都市ミリャン。シングルマザーのシネ(チョンドヨン)は、息子のジュン(ソンジョンヨプ)と共に亡き夫の故郷であるミリャンに引っ越す途中で車が故障し、立ち往生してしまう。レッカー車でやってきたのはジョンチャン(ソンガンホ)という男は、シネに惹かれて世話を焼くが、彼女は全く相手にしない。ある日、シネが帰宅するとジュンが何者かに誘拐されてしまっていた…。

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ミリャン=秘密の陽射し=シークレット・サンシャイン
実際に韓国に存在する韓国南東部の地方都市。田舎だからすぐ情報も伝わる狭い世間。

皆が皆、どことなく良い人間じゃない。挨拶したばかりの洋服店の店主にインテリアを変えろというシネも。シネの陰口を広める店主も。関心がない人に対してしつこく宗教勧誘してくる薬局の人も。初対面のジョンチャンに対して「あなたは姉のタイプじゃない」と伝えるシネの弟も。息子が亡くなって呆然としているシネに対して「泣きもしない」と叫ぶ義母も。

特にシネは、ジョンチャンに「あなたには関係ない」と言い放つ割には、困ったときにはジョンチャンに頼るし、貯金が100万もないのに見栄を張りたくて土地を買おうとしてると言いふらすし、旦那の浮気を受け入れることもしない、なかなか感情移入できない。自分の見たいものだけ見えて、信じたいことだけ信じたい人なんだと思う。

結果、深い信仰を持つことになったシネだが、許そうとした相手が先に勝手に許されていたことを知り、事態は急変。情緒がおかしくなってしまう。
自分自身信仰はないけども、決して許せない出来事に対して、許す心を持って相手に対峙した時に、相手が「自分は神に赦された」なんて言われたらやるせなさの塊が一生抜けないと思う。赦すことで自分が解放されるためだったのに、なぜ自分よりも先に神が赦しているのか。何も信じたくなくなるだろう。だからこそ、信じられなくなった神に向けて「見てるか」というような眼差しを空に向けて浮気するシーン、心に残る。

息子の死体やシネが万引きするシーンなど直接的なところは映さない表現が印象的。
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