明石です

THE WAVE ウェイヴの明石ですのレビュー・感想・評価

THE WAVE ウェイヴ(2008年製作の映画)
4.0
「団結」と「服従」が独裁を生み出す話。

学校で独裁の授業を開くことになった平凡な高校教師。自分に「様」をつけさせ、自分の言うことには何でも従わなければならないというルールを導入した結果、教室には異様な連帯感が生まれ、教師は権力に酔いしれ、生徒は服従に歓びを見出すようになってしまう、、スタンフォード監獄実験やアイヒマン実験を学校という現実の世界に持ち込んだ感じのお話で、設定の質感がリアルなだけにかなりゾッとさせられる。

作中で語られる通り「独裁」というワードに何処よりも敏感なドイツで作られてることは本当に意義深いと思う。役者たちの演技も真に迫ってるし、彼らの組織「ウェイヴ」が無法者の集団と化し制御不能に陥っていく過程は文句なしに恐ろしい。敬礼を取り入れたり「集会」を開いたり、あるいは真実とは異なるプロパガンダを平気で流したり、組織が明らかにナチらしくなっていくのに、輪の中にいる人たちは誰も違和感を持たないの怖すぎる。一方で輪の外にいる人たちが引いてるのもなお良い。こういう外部の人たちのリアルな反応が見られるのは『es』との差別化点かもですね。

はじめは明らかに軽蔑されていた(本人曰く、短大卒の体育教師)ベンガーが、「様」づけで呼ばれるうちにだんだんそれらしくなってきて、生徒もベンガー様!と進んで尊敬するようになる展開とても好き。それらしい役割を与えられ、団結と服従さえできれば、結局リーダーなんて誰でもいいといいんだろうなと思う(ウェイヴはドイツ全土を飲み込むのだ!我々の邪魔をする者は叩き潰す!!)。ラストまでテンポ良く駆け抜けて、なおかつ落とし所も素晴らしく怖かった。

いつか同じ監督で続編を作ってほしいなあ。
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