夏藤涼太

犬神家の一族の夏藤涼太のレビュー・感想・評価

犬神家の一族(1976年製作の映画)
4.1
NHKで4K修復版がやっていて、どんなもんの画質なのかと少しだけ見るつもりが、面白くて最後まで見きってしまった。

金田一耕助シリーズの中では特別面白いものではない(というか本格推理としてはアンフェアな)原作を、ここまで面白く仕上げた市川崑……というより、映像映えする原作だと見抜いた角川春樹はマジで天才。

本作より優れたミステリー映画はいくらでもあるだろうけれど、「もっともロマンのある邦画ミステリー」だと思う。

美しい那須(長野)の田舎を舞台にした愛憎ドロドロの人間関係に、ムラ社会的な家制度や遺産相続が絡んだミステリー。
そして何より優れているのは、原作ではあくまでも味付け程度に使われている(というより理屈で解決されてしまう)土俗ホラー要素を、ちゃんとロマンのある土俗ホラーに仕上げているところ。

ぶっちゃけ原作を初めて読んだ時は、「『犬神家の一族』なのに犬神憑きも犬神信仰も犬神の呪術も出てこないのかよ!」とガックリしたものだったが、この映画版では、犬神佐兵衛がちゃんと犬神信仰をしていた四国からの漂流者であることが映像面や設定から匂わされていて、その結果、ラストの「佐兵衛の怨念によって全てが操られていた」というホラーなオチの説得力を増させているわけで。

ただ、やっぱり「ヨキケス」のネタはちゃんと映像化してほしかったな……あれだけ逆さシーンが印象的な場面になっているんだから。

しかし、映像綺麗すぎてビビったわ。別に4K対応テレビでもないのに、4K修復とかいう謎の技術、パねえな……
夏藤涼太

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