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犬神家の一族のarakiのレビュー・感想・評価

犬神家の一族(1976年製作の映画)
5.0
間違いなく愛の物語だった。
受け継がれる血と業に家族の愛というか、そういうものを感じた。
この映画を観ることが出来て本当によかった。
言い過ぎじゃないの?って感じだけど、鑑賞中なにか分かんない涙がこぼれていた。
鑑賞後の余韻がとんでもなく心地が良い。まるで母親の胸に身を預けているような気持ちになりずっとこのままでいたいと思った。
犬神家の一族でお馴染みのキャッチーなあの曲もすごく好き。タイトルは「愛のバラード」。なんて素敵なんだ。
今は通勤中に繰り返し聴くくらいお気に入りの曲になった。

本作は後に色んな作品にオマージュされているのでなんとなく知ったような気でいたものの実際に見たことはなかった。
今回は角川のYouTubeチャンネルで期間限定で無料配信されていたものを鑑賞した。
相関図やあらすじなどは複雑で、ネタバレにも繋がる部分があるため割愛するが、最も有名なのは「スケキヨ」のビジュアルと湖で逆立ちしている絵面だろう。
スケキヨも湖のシーンも実際に観るまでは見た目のイメージで勘違いしていた部分が多かったので実際はこうだったのか、と知って驚き。

犬神佐兵衛の業の深さが計り知れない。全て自分が撒いた種なのだが、なぜか憎めない。
創作はストーリを進めるにあたって何者かを悪にするきらいがあり、犬神家に出てくるキャラクターは例に洩れずみんなそこそこ腹黒くて卑しくて寂しくて陰湿で排他的なのにそんな人たちの中にもどこか善性が見えた。なぜか考えてみたが、それは家族を守ろうとする愛が見えたからではないだろうか。
本作はミステリー作品であり初めこそ自分でも推理してみようと意気込んでいたのに、つい登場人物の心境や犯行動機にばかりに目がついてしまいまともに考えることが出来なかった。私は感情的な人間だからロジカルな思考をすることが苦手みたい。
誰も得をしない、救われないエンディングがよかった。仮にハッピーエンドだとしたら低評価を押していたと思う。そんなものは求めていない。
とにかく愛だった。最初から最後まで愛だった。自分の中の愛が足りなくなった時にもう一度観ようと思う。

本作がかなり自分に嵌ったようで原作も読んでみたいし、他の横溝正史作品も読んでみたい。
すごく心に残った一作。
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