明石です

ヒストリー・オブ・バイオレンスの明石ですのレビュー・感想・評価

4.3
インディアナの小さな町でダイナーを営み、妻子とともに平凡ながらも満ち足りた暮らしを送っていた男。店に押し入ったギャングを鮮やかな手際で返り討ちにしたことで、町のヒーローとして祭り上げられ、有名人になり、それをきっかけに、男にまつわる驚きの過去が明るみに出てしまう。ひとりの人間の内面に潜む二面性にフォーカスを当てた作劇を得意としてきたデヴィッド·クローネンバーグのギャング風バイオレンス映画、いうなればクロネン流『スカーフェイス』で、どれだけ斜に見ても、これが面白くないはずはない。

タイトルからある程度内容は察していたものの、まさかここまでストレートなバイオレンスドラマとは。クローネンバーグ監督作というのを事前情報として知ってなければ、この人の映画だと気づかなかったかもしれない笑。彼がプリンス·オブ·ホラーと呼ばれていた80年代の『ザフライ』や『ビデオドローム』とはずいぶんと異なる作風。でもそのストレートさがむしろ醍醐味で、その中に時おり挿入される暴力的なセックスシーンや、顔面を撃たれたギャングの顔の下半分が損壊し、ゾンビのようにガクガクと断末魔の震えを見せる描写はさすがのおぞましさ。とはいえ、この(クロネンらしくない)理解しやすいプロットが人気の秘訣のようで、もともと脚本が用意されていた”雇われ仕事”を、監督のお気に入り俳優ヴィゴ·モーテンセンとの仕事でどうにか味付けをした跡が垣間見える。好き。
明石です

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