眠人

パリのランデブーの眠人のレビュー・感想・評価

パリのランデブー(1994年製作の映画)
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愉快で滑稽な3話の短編が詰め込まれた作品。全体の尺も短過ぎず長過ぎずと良い塩梅だった。

一話目は恋人の浮気疑惑に思い悩む女子大学生(院生?)のお話。画面が多彩になる賑やかなマルシェのシーンが素敵。そんな素敵なシーンだけど、ナンパ男に付き纏われたり、大事なものを落としてしまったりと、とほほ展開になり、それが思わぬ事態に繋がってしまう。

二話目は恋人への愛が冷めてしまった女性とその女性に恋する男性のお話。河川敷、公園、墓地、科学館等、パリの色々な場所で密会し、散歩デートしながらお喋りしまくる二人。いいねえ、青春だねえ、末永くお幸せに、と思っていたけど、そういう結末なのか。女性の方が一枚上手だった。

作品を締め括る三話目はパリ国立ピカソ美術館の近くにアトリエを持つ冴えない画家のとある一日のお話。この画家の作品、凡庸かつ陰鬱でお世辞にも褒める気になれない。知り合いの紹介でアトリエを訪れたスウェーデン人の女の子にもボロクソに批評される始末。その率直さとユーモラスな批評に思わず吹き出してしまった。率直にものを言う人は気持ちいいね。この見栄張りの画家、道端ですれ違った見知らぬ女性に心惹かれて後をつけ始める。最早ストーカーじゃないか。その女性は美術書編集者で、しつこい画家にも大人な対応。画家が女性に近づくたびに、女性がそれをひょいと上手く交わすシーンが良い味を出していた。

どの話も執着心が強い男性とそれをあしらう女性のやりとりが目立った。そして、歩いては話して、歩いては話しての繰り返し。作品の60〜70%ぐらいが散歩のシーンじゃなかろうか。散歩好きの自分のための映画なのかもしれない。それにしてもパリで映像を撮って繋ぎ合わせれば、それだけでそれなりの映画になるんじゃなかろうかと思ってしまうぐらいパリは魅力的な街だ。異国人だからそう思うのかもしれないけど。人生で一度で良いからカフェで待ち合わせとか洒落たことやってみたいなあとぼんやりと思いながら、時にクスクスと笑って穏やかに鑑賞出来る良作だった。
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