菫

美しき小さな浜辺の菫のレビュー・感想・評価

美しき小さな浜辺(1948年製作の映画)
4.5
雨の降りしきる海辺の町に、どことなく物憂げな一人の青年ピエールがやってくる。ピエールの訪ねた宿では、女主人のほか、女中マルトと孤児の少年が働いている。ピエールは次第にマルトと心を通わせ、少年にも歩み寄ろうとする。しかしながら、ピエールは心に深い傷を抱えていた。 

これまでの人生で聴いた潮騒のなかで、いちばん淋しい音だった。町には永遠かと思われるほどに雨が降り続ける。傘を持たない彼はずぶ濡れだ。孤独なピエールにとって、芯の強い女マルトは唯一の癒しとなるが、それでもやはり、彼の心の雨はやまない。愛を知ったあと、人は本当の淋しさに気づく。美しきものは時に残酷だ。
菫