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ジャスミンの花開くのtakのレビュー・感想・評価

ジャスミンの花開く(2004年製作の映画)
3.3
三世代に渡る女性の恋愛模様を描く人間ドラマ。チャン・ツィイーがそれぞれの世代の娘を一人三役、そしてジョアン・チェンがその母・祖母を演ずるという構成。ストーリーも面白いのだが、アジアの名花二輪の演技が何よりも見どころ。

写真館の娘茉(モー)は、世間体を気にする母親の反対を押し切って、映画女優として成功をつかもうとしていた。しかし映画会社社長の子供を身ごもってしまう。堕胎を勧められるが、社長は戦争が迫り香港へ脱出。残された主人公は母親の下で出産する。第2部は、その茉をジョアン・チェンが演じ、娘莉(リー)をチャン・ツィイーが演ずる。

この映画でのチャン・ツィイーの熱演は実に素晴らしい。第2部の莉がノイローゼに陥る場面の鬼気迫る演技、そして第3部の花(ホア)が豪雨の中出産する感動的な場面。改めて思うのは女性の強さと繊細さ。

それ故にこの映画の男達はどうも頼りない。身勝手な映画会社社長、仕事が第一と家庭を顧みない党員、曖昧なことしか言えない優柔不断な男。第3部の相手役リィウ・イエは「山の郵便配達」の息子を演じていた若手男優。また、過去の栄光にすがり続ける茉の姿も印象的。自分が表紙に載った映画雑誌を火にくべるところは泣けてきた。ジョアン・チェンの存在の大きさがこの映画を支えている気がする。

中国社会が時代とともに変化していく様子も上手く取り入れられていて興味深い。大戦前の華やかな時代、日本軍の侵攻、社会主義国家建設、現代の集合住宅立ち並ぶ団地・・・それぞれの時代の生活や風俗も面白い。社会主義政権下となる第2部。ブルジョア的な育ち方をしてきたヒロインと、労働者家庭との対比は見事。どんな時代、状況でも自分をしっかり持って生きる女性たちに希望を与えられる映画だ。自分らしく生きようとする気高さが心に残る。
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