三樹夫

未来の想い出 Last Christmasの三樹夫のレビュー・感想・評価

未来の想い出 Last Christmas(1992年製作の映画)
3.6
売れない漫画家の清水美砂と結婚に失敗した占い師の工藤静香が91年に死んでしまい、2人とも81年に戻って人生をやり直すループもの。原作はF先生で、そのためか漫画家パーティーのシーンでは赤塚不二夫、豪ちゃん、A先生、石ノ森章太郎、さいとうたかを、つのだじろう、コンタロウ、蛭子さんと錚々たる漫画家メンバーが出演しており、F先生も出ている。ただ蛭子さんはクレジットを見る限り漫画家としての出演というか普通に役者としての出演だったっぽい。
他にも何このメンツみたいな配役になっており、清水美砂の恋人役が和泉元彌、工藤静香の恋人役がデビット伊東、山口二矢みたいな役で唐沢寿明、そして太田光代、鈴木京香、渡辺いっけいも出ている。
EPICソニーのアーティストの楽曲が邦楽洋楽とも多数使われており、作品の80年代感バブル感を漂わすのに一役買っている。
Wham! - Last Christmas, Cyndi Lauper - Time After Time, Earth, Wind & Fire - Let's Groove, Men at Work - Who Can It Be Now, 大沢誉志幸 - そして僕は途方に暮れる、米米クラブ - 浪漫飛行、他にも久保田早紀、シャネルズなどが流れる。

1回目のループで清水美砂は漫画家として成功するんやと『美味しんぼ』を丸パクリして持ち込み、工藤静香は大当たりする馬券と株に金ぶち込んだらいいんやと2人とも経済的には成功する。工藤静香が馬券と株を買うシーンで流れるのはMen at Workの「Who Can It Be Now」だが、この映画での曲の使われ方は劇中の年代とリンクしているというよりは歌詞がシーンにリンクしている使われ方をしている。「Who Can It Be Now」は誰かがドアの前にいるみたいな歌詞だが、流れる前のシーンは妹がドアをノックしておりそこともリンクしているし、謎の男和泉元彌が登場したり未来の知識で馬券を買うのとリンクする部分の歌詞もある。
ループものはどうやったらループから抜けられるのかというのが作品のテーマとも絡んできて、例えば『恋はデジャ・ブ』は人間性の成長によってループから脱出していたが、この映画は人生は経済的な成功だけじゃなくない?みたいな感じ。
また清水美砂と工藤静香の友情ものというかシスターフッドものにもなっている。何故かループしてしまう世界でただ2人だけが気持ちを共有しており、本来なら通じ合うことがなかった文化系漫画家の清水美砂とヤンキーチックでバブリーな工藤静香の間に友情が芽生える。なんか清水美砂と工藤静香ってプライベートでも全く接点なさそうだし、そのため劇中で2人が心を通わせているのが余計に良く感じる。またナチュラルにセクハラが酷くて、もっと化粧したらとかもっと笑えばと、ほんと碌な時代じゃねぇなというのを感じる。ループ前の工藤静香の夫とかクソ夫でしかなかった。そんな時代の中2人で頑張る様に心を打たれる。

この映画作るにあたっては『時をかける少女』を参考にしているように感じた。タイムループというプロットだけではなく、雰囲気もそうだし、一番大きいのは全く演技が出来ない役者でどうやって映画を作るかというので同じやり方を踏襲しているように思う。とにかく工藤静香と和泉元彌が演技下手で、かといって清水美砂とデビット伊東も演技上手いわけではないし、メインがあまりにも不安定過ぎる演技力の中どう作るか、不安定過ぎる演技力をどう映画の中に落とし込むかでいっそのこと演技させないと思ったが、棒読みでもファンタジーな雰囲気にあっている。
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