CHICORITA主任

未来の想い出 Last ChristmasのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

未来の想い出 Last Christmas(1992年製作の映画)
4.5
森田芳光70祭2023 in 新文芸坐にて。上映後にはライムスター宇多丸氏と監督の妻でプロデューサーの三沢和子氏、そして本作にも出演した俳優の宮川一朗太氏によるトークショー付きでした。

藤子・F・不二雄の同名マンガが原作である本作。映画化に当たって原作から数々の改変がされていますが、特に大きいのが初老の男性だった主人公を二人の女性に変更したこと。これにより人生のやり直しに対する女性ならではの切実さ、また二人の女性の連帯=シスターフッド要素が加わることで、メッセージの強度を高め現在の観客の眼から見ても古びない作品となっています。この改変はもちろん監督のアイデアだったとのことで、他の作品でも感じる森田監督の先進性にはただただ驚かされるばかりです。

キャスティングも豪華で、主演を務めるは清水美砂と工藤静香。それぞれの相手役にはデビット伊東と和泉元彌(!)という錚々たるメンツ。また橋爪功や宮川一朗太といった森田組でお馴染みの面々や、原作者藤子・F・不二雄氏ほか、レジェンド漫画家のお歴々がカメオ出演しています。

また本作を彩るのが、現在ではまず無理という洋楽・邦楽を問わないポップミュージック使い。タイトルにも加えられたワム!の「ラストクリスマス」など数々の名曲がシーンとテイストや意味を合わせて効果的に配され、これまた昨今の映画音楽のトレンドを先取りしています。

そして特撮マニア的に見逃せないのが、劇中の飛行機のシーンなどの特撮を当時プロとしてデビューしたばかりの樋口真嗣氏が手掛けている点です。この映画での仕事に手応えを感じ自信をつけたことが後の平成ガメラシリーズに繋がっていったとのこと。平成ガメラのルーツの一つに森田映画があったとは!

宇多丸氏も大のお気に入りという本作は、確かにエンターテイメント映画として一級品で、なおかつクリスマス間近のこの時期に観る映画として最高でした。
配信でも観られるようなので、ぜひクリスマスシーズンの今、ご覧ください。
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