Ricola

男性の好きなスポーツのRicolaのレビュー・感想・評価

男性の好きなスポーツ(1964年製作の映画)
3.7
『赤ちゃん教育』のセルフオマージュ作品。
破けたドレスなどの名シーンなんて、明らか
なオマージュだとうかがえる。
ただ、そういった細かい部分に限らず、作品の構造に関しても『赤ちゃん教育』との類似点が多く見出だせる。


まず挙げられる共通点は、女性に振り回される男性、女性によって男性の威厳が危うくなるという点である。
主人公のロジャーが釣り道具のセールスマンという仕事で成功している男性社会では、彼の威厳やプライドはほとんど確固たるものなのに、アビゲイルやイージーと関わるようになると、彼の情けない側面が露呈される。この男女の不均衡さ自体が、作品のスラップスティックコメディ要素の主軸となっている。
女性たちによってロジャーは、それまで確立されていた「かっこいい」「できる男」像が崩され、水の中に落ちたり転んだりと情けない姿を晒していく。
また、主人公の身体が逆さになることが繰り返されるが、これは完璧な男性像が覆されることとリンクしている。
車内や水中で彼は文字通り真っ逆さまになり、彼は醜態を晒すことになるのだ。

転ぶこと。これは『赤ちゃん教育』でも頻繁に出現するモチーフである。
例えば、ロジャーがキャンプ場で車の上に乗せていたボートを運び出すものの、散らばっているバケツに足を入れてしまいバランスを崩して転ぶ。
またあるシーンではロジャーが赤いバイクに乗って走っていて、スピードを落とせずに木にぶつかってすっ転ぶ。
さらに湖に落っこちることも繰り返す。
3日間の釣り大会にて彼は毎日湖に落ちる。

このように、ロジャーは女性たちと関わることで化けの皮がはがされる。
また、彼の「本来の」姿は、転ぶことや落ちることというアクションとともに表出されるのだ。この構造は、やはり『赤ちゃん教育』と同じものである。

正直無理矢理感や散らかった印象は否めなない。『赤ちゃん教育』のような潔さとシンプルさはないが、ただアクションの歯切れの良さとコメディの連携は健在であった。
Ricola

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