あの娘のとなり

ロボコップのあの娘のとなりのレビュー・感想・評価

ロボコップ(1987年製作の映画)
4.5
何度観ても本当におもしろいな。

純粋で単純明快な設定も変態ヴァーホーヴェンにかかればこんなにも悪趣味なエンターテイメントに仕上がる。

近未来のデトロイトはディストピアなムードが満載で、何故か男女混合のロッカールームは素晴らしく品が無くて、時折挟まれるニュース番組やCMは現実社会と地続きの風刺性を含む強烈なブラックユーモアで、何の躊躇もみせないバイオレンス描写は明らか悪ノリしすぎで最高だし、ED209の不気味で滑稽な(でもちょっと可愛い)ストップモーション・アニメや、絶叫するジョン・ランディスと躍り狂うヴァーホーヴェン本人の姿まで拝めるしで、もう愉快すぎる。

そして何よりこの映画は、悪党によって「生命(自己)」を奪われ機械化された男が、その悪党たちを皆殺しにし「自己」を再び取り戻していくという復讐と再生と正義の非常にアツい男の物語となっている。

マーフィーは死を克服し機械によって生命を取り戻した「人間」ではない。
あくまで彼は医学的には単なる「死体」で、細胞死のしていない身体が機械のパーツとして使用されている
哀しい存在。

それでもそんな機械となった彼のガンをしまう時クルクルする仕草は、マーフィーが息子に披露する為ガンスピンの練習をしていたあの生前の面影を強く感じさせ、また、その息子と妻の記憶をかつて家族で暮らした家で思い出すシーンや、素顔の彼がそこにいるラストシーンは最早単なる「機械のヒーロー」の物語ではなく「ひとりの男」のヒューマン・ドラマであり、それは涙がでる程に感動的。

人間の形をした機械(ロボコップ)であった彼は、最後には機械の身体を持った人間となるのだった。