リサ

炎上のリサのレビュー・感想・評価

炎上(1958年製作の映画)
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三島由紀夫「金閣寺」の映像化作品。
原作も好きだが、映画も素晴らしい作品。

市川雷蔵は、少しお茶目な役をやっている時が好きなのだけど、雷蔵の作品で一番好きな作品を聞かれたら、病んだ心を持った金閣寺放火犯を見事に演じきったこの作品を挙げると思います。

そして、母役の北林谷栄といい老師役の中村鴈治郎といい副司役の信欣三といい、友人役の仲代達矢といい、父役の浜村純は出番が少ないながら脇役がいちいち濃いのです。
特に、主人公の内なる美を蝕み、汚す存在としての母を演じた北林谷栄の演技が
素晴らしいです。垢じみて汗ばんだ顔、こじんまりした体、甲高い声、全身で母親の「無明さ」を演じきっていました。

その後、水上勉の方の金閣寺(こちらは三島作品とは違い、事実の忠実な調査と記録といった方が近いです)を読み、金閣寺放火犯が収監後暫くして、あれほど蔑んでいた亡き母を恋い慕う切ない手紙を書いていた事実を知り、何とも悲しい切ない気持ちになりました。
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