【発狂した女】
塚本晋也監督は、手持ちカメラ乱用の演出が荒々しく好き嫌いの別れる人だと思うんだが、全体を通しちゃんと現代社会批評になってる所が偉い。体裁が整ってるというか。
歌手のCoccoのプロモーション映像としても秀逸な出来栄えの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』日本版。この監督の中にある一種の終末観がピークに達した問題作である。
ラース・フォン・トリアーから庵野秀明などを彷彿とさせる、ゲリラ撮影&低予算臭がプンプン匂うインディーズ映画で、とにかくCoccoが全編を通して心を病んだママさんを熱演している。彼女のサイコパス演技に拍手を送りたい。
塚本自身がキーパーソンであるストーカーを演じているのも見所の一つ。次作の『野火』と並んで、日本の病理を浮き彫りにした精神異常映画の金字塔。
問題のラストシーンがちょっとスコセッシの『シャッターアイランド』と被るのがまた不思議…