くわまんG

RONINのくわまんGのレビュー・感想・評価

RONIN(1998年製作の映画)
4.5
あらすじ:主をなくした浪人達よ、これから何のために生きるのか。

南仏市街地でのド迫力なカーチェイスや銃撃戦が取り沙汰される本作品ですが、激アツ激エモのサムライソウル一閃ムービーで大大大好き。

国の刃として暗躍してきた諜報機関の凄腕エージェント達も、争いが無くなればお払い箱。フリーランスとしていかがわしい任務で食いつなぐその姿は、まるで主を失い悪代官の用心棒に成り下がったかつての侍、浪人のごとし。

合衆国の浪人サムは、お国という主を無くし、“凄腕エージェント”というアイデンティティを無くした男。傭兵は、報酬はあってもやりがいが無い。

そんなおり舞い込んだ、不透明なミッション。依頼人も連絡係の女も素性知れず。案の定張られていた罠を見事に掻い潜るサムでしたが、真相が明らかになるにつれ、取捨選択を迫られます。「言われた通りに仕事する」のか、「正しいと思ったことをやる」のか。それは、浪人となってからずっと自問自答してきた「俺はこれから、何のために生きるのか。」への答えに他なりません。

クライマックス、元CIAがついた嘘「俺はまだCIAだ!」が泣かせます。あれは惚れた女への思いやりであり、彼女の真意の推し量りであり、主なくとも貫いた正義の証なんですね。

サムの切ない想いを汲み取ったのは、志同じくする異国の浪人。おごってもらった一杯のコーヒーは、苦味も深みもひとしおだったはず。「次は払うよ、また逢おう。」と言いながら、二度と邂逅しないと知っている二人ですが、その絆はもはや赤穂浪士のごとしなのです。

ただ、赤穂浪士と違って討ち死にしなかったRONIN達には、新たな人生があります。待っているのは相変わらず苛烈なものかもしれませんが、いずれ吉事に違いありません。