ダイナ

ソナチネのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

夏になると観たくなる一作を再鑑賞。たけし映画を観たこと無い人に何を勧めるかとなったら「キッズ・リターン」か「BROTHER」か「アウトレイジ」なのですが、個人的に一番好きな一作と言われたら本作になります。(じゃあソナチネ勧めろや)沖縄の大自然の中で繰り広げられる静止したバイオレンス描写が素晴らしく、激しいアクションはありませんがたくさんの強烈かつ美麗なカットがメインテーマや沖縄民謡に乗せられて脳裏に焼き付きます。まさに人生最後の夏休み。洗練された90分弱。緩やかに真綿で首を絞められるような感覚こそ本作の魅力。

初見時、クレーン拷問シーンは引きましたが今観るとシリアスギャグだったんだなと笑えてきます。(俺は心が荒んできているのか…?)反対に、本作でおそらく一番有名であろうロシアンルーレットのシーンは昔はなんだそれと笑っていましたが今観ると言葉を失うというか、村川が死ぬことを考えている(恐れている)という事を踏まえるとかなりテーマに迫ったシーンだということが分かります。

エレベーター(大名場面!)や報復のシーンの強烈さはもちろんのこと、日常での遊びのシーンも印象深く、紙相撲からのリアル相撲とか落とし穴とか雨のシャワーとかの些細な描写がコミカルで面白いです。人数が減っていくのと同時に人間関係が深まっていく所にも魅力なポイント、襲われていた所を助けた女が仲間内で打ち解けていたり、特にケン(寺島進)と良二(勝村政信)が段々仲良くなっていく過程がとても好きです。基本浜辺が心が解放される場所として描かれているような気がしていて、だからこそ浜辺でボートを挟んで射殺されるケンのシーンから遊びの時間が終わってしまったようで切ないですね。

たけし映画を色々と観ているといつも死に場所探している印象を受けますがそんな作品群の中でも本作が一番好きです。そういった負の感情を制作活動にぶつけているのか今でも元気で意欲的な姿を見るととても嬉しくなります。

本作クレジットロールが終わり浜辺の画面が映されます。そこでは朽ち果てた(?)ボートが映されます。あれは時間が経ったのか、報復に来たヤクザに壊されたのか。(良二は逃げ切れたのか)
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