故ラチェットスタンク

ソナチネの故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.2
『なんくるないさあ』

 北野武の初期の三作品を観て、加害欲について取り上げられているのかな、とぼんやり思いました。

 『その男、凶暴につき』にしろ『3-4x10月』にしろ今作にしろ、様々な上下関係の元で振るわれる暴力描写(大体半分ぐらいは、と言わず8割ぐらいはパワーハラスメント描写だったりするのですが)は通底していたように思います。

 今作『ソナチネ』では、"暴力"に浸り続けた男が、ある意味お暇をだされます。(沖縄に行って他の組との悶着?を収めるよう指示される。ぶっちゃけ手打ちですぐに済むから休暇みたいなもの。)しかし暴力それ自体は追って来てしまいます。それは、実は裏で手を回されていて陥れられたという外的な話もそうですが、内的な話でもあるとも私は考えました。沖縄で遊んでいる間、下っ端を巻き込んでパワハラ的にロシアンルーレットをさせたり、花火を撃ち合っている時に(雪合戦ならぬ花火合戦?と言っていいでしょうか)銃を撃ったり、フリスビーで遊ぶ時も銃を使おうとしたり、身に染み付いてしまった"暴力"が垣間見えるように感じました。ある意味ニコラス・ウィンディング・レフンの『ドライヴ』的な、「毒を持った男」の話なのかな?と何となく思います。自分の生きて来た世界の概念から距離を置こうとしても追われてしまう。どっぷりと自分が蝕まれていることに(自分自身が蝕んでいる)ことに気づく、というか。

 砂浜と海をジリジリと照らしつける太陽の熱。沖縄という舞台の持つ朧げな空気の中でぼんやりと浮かび上がる希死念慮と濃い色彩感覚で生まれる厚薄。疲労に辟易する。淡々と。