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地球に落ちて来た男のSPNminacoのレビュー・感想・評価

地球に落ちて来た男(1976年製作の映画)
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赤い髪の青白いボウイは地球に落ちてきた異星人でも不思議はなく、むしろそれ以外に不思議が満載だった。特に謎のカブキ・ショウみたいなの見せる日本料理店、なんちゃって和風建築。いや時代を感じるね…手回しエレベーターもびっくりだけど。
でもこの異星人、ルックス(コスプレ)はアヴァンギャルドでも根がかなり保守的なんである。着陸でなく着水するショットからしてそうだけど、ずっと生殖や家族の話だから。生命を繋ぐ水を求めて地球に来たところが乾いた荒野、コミュニケイションは不毛。当時に失われつつある父権社会の原風景を恋しがる異星人は、確かにキリスト教と馴染みがいいはずだ。
終盤は更に色々訳わからん展開だけど、どうやら地球の退廃に順応しすぎてしまったようで、みんなみんな落ちて堕落していく。ボウイは人間の欲望を受け止めて飲み込んでいく。そしてクリスマスにサンタクロースは来ない。
ニコラス・ローグはカットバックを多用したイメージのマッシュアップがサイケデリックの名残みたいで、これもセックスシーンが即物的。70sヴィンテージなプロダクション・デザインやちょっと可愛い宇宙船は面白いし、背景の絵画や引用した映画や繰り返す水のモチーフも印象強い。目とメガネ(極端な瓶底メガネ!)や人体パーツへの拘りがまたギョッとさせる。あとジンが飲みたくなる。当時の美しさと病的さと気味悪さが混在したボウイは、やっぱり人を超越してた。
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