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二頭女-映画の影のTnTのネタバレレビュー・内容・結末

二頭女-映画の影(1977年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

 影の一人歩き。影は別人のごとく動くし、または壁に焼き付いている。トリック的だが、それだけでないリリシズムがある。寺山作品は見世物という点でメリエスに近いが、トリックだけに止まらないところが良い。高松次郎の「影」シリーズに近いアプローチだが、どうやら二人は交流あって、調べたところ「書を捨てよ~」の美術にも高松は関わっていたそうだ。今作では特に明記されていなかったが、影響あると言えるだろう。

 女と男の生活を赤裸々に明かす。影はいつも一歩遅れてくる存在であり、「書見機」でも文字は遅れてくる(うろ覚え)と言っていたように、影とは色も暗いし文字と同じなのかもしれない(こういう詩によってしか接続できないことを寺山たくさん行なっているなぁ)。影は今の彼女に過去を暴く存在となる。それは、寺山作品に一貫する怨念そのものだろう。また少女の姿も女性の過去の面影として機能しているように思える。

 寺山にしてはロマンティック。本人も後半出て来て、監督自身が映し出されるのは「書を捨てよ~」と今作ぐらいなのだろうか(インタビューは除く)。映画はラスト、セットであることを明かして、監督やスタッフの姿も明かす。そして監督もスタッフも消え、女性だけが取り残されるのは、ペシミスティックなきらいさえある。人々はいつだって去っていくなぁ。逆に、影は怨念なのかもしれないが、最後まで自分についているという希望的な見方もできるかもしれない。そこには監督も介在できない。
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