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ウルトラQザ・ムービー 星の伝説のHKのレビュー・感想・評価

3.8
トラ年ですから・・・その⑩《コジツケ編》
しつこいと嫌われそうなので(もう手遅れ?)これでラストにします。
今年は『シン・ウル“トラ”マン』も公開されることですし、最後は『ウル“トラ”Q』をセレクトしました。
Filmaでは酷評のようですが私は好きな作品です。

『ウルトラマン』に先駆けて製作された円谷TV特撮の元祖の24年ぶりの映画化作品です。
監督と脚本は『ウルトマン』『ウルトラセブン』『怪奇大作戦』シリーズで数々の伝説の名作であり異色の回を担当した実相寺昭雄と佐々木守のコンビ。

オープニングは当時と同じくモノクロのタイトルに続いて石坂浩二のナレーション。
そして、既に当時から子供向けとは思えなかった実相寺ワールドが展開します。
傾いた地平線や広角レンズを多用した異様な構図、タバコの煙漂う暗い室内、不穏なパンと寄り、いきなりの舞台風演出など一目で実相寺作品とわかる独特の映像のオンパレード。

過去のTVシリーズで実相寺が監督した回は他のオーソドックスな回とは全く趣が違い、子供心に内容は理解できなくともリアルで強烈な印象を植え付けられた作品ばかり。
しかも本作の下敷きとなっているのはかつて円谷プロとATGが共同製作予定だったものの過激な内容でNGとなった幻の劇場版企画「ウルトラマン/怪獣聖書」。

元となった怪獣聖書のザックリした内容はこうです。宇宙の癌である地球人を滅ぼすためにある宇宙人がやってきます。ウルトラマンは地球を守ろうとしますが、やってきた宇宙人は戦争や自然破壊の絶えない未来の地球をウルトラマンに見せ、宇宙全体の平和を守るのか、地球人を守るのかの二者択一を迫ります。
そこでウルトラマンは、自分が地球人の監視者となり、もし地球人が本当にそれほど愚かなら、そのときは自分の手で地球人を始末すると約束し、宇宙人は帰っていきます。

このシナリオのミソは、舞台がウルトラマンTV放送時の1960年代に設定されており、宇宙人が見せた未来とは実は既に現実となった当時の1980年代の地球である点です。

さまざまな理由でボツ企画となった上記シナリオを、ウルトラマンの存在しない『ウルトラQ』の世界に置き換え、制作会社を変えて苦肉の策で実現したのが本作です。

今あらためて観るとリアルなドラマなど平成ガメラシリーズへの影響もうかがえます。
“ちな坊”を含む実相寺組常連の他、地味な豪華キャストの名演技も見どころ。
怪獣は出ますが小さなお子さんの鑑賞には全く適しませんので、その点はご注意。
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