今から約35年ほど前、早稲田にあったACTミニシアターで見た覚えがありそれ以来の再見。森雅之と京マチ子の兄妹の取っ組み合いの喧嘩だけは鮮明に覚えていたが、久我美子と堀雄二との駆け落ち一歩手前の話はまったく忘れていた。砂埃が舞う田舎の畦道を日傘を指して気だるそうに歩く京マチ子を見ているだけでゾクゾクするのだが、やはり特筆すべきは兄妹の喧嘩シーンで、見返してみてカットを細かく切っていることに驚いた。京マチ子の顔、切り返して森雅之の顔、後ろに引いて森がちゃぶ台をひっくり返す、京の後ろから森が顔を張る、森の後ろから京が掴みかかる、アップで森が京を叩くという感じで数分のカットを細かくつないで臨場感を盛り上げている。芸が細かい。もうこういう映画はつくられることもないのだろう。田中絹代が監督助手で付いていたことを特典映像で知った。
