tacky

あにいもうとのtackyのレビュー・感想・評価

あにいもうと(1953年製作の映画)
4.8
水木洋子の、兄弟と家族を描いた隙の無い脚本。

頑固で不器用なので、時代についていけ無いが、人一倍家族を思っている川師の父の山本礼三郎。
父譲りの生き下手で、粗暴だが妹思いの長兄を、いつものインテリな佇まいと真逆な粗野感を、全面に出して演じた森雅之。
本当は臆病なのに強く装って、男や世間にスレて生きる、次女の京マチ子。
冷静な判断力があり、男に裏切られても、毅然と自分を保つ、末っ子の久我美子。

そして何と言っても、穏やかでワザと真剣な物事に気づかないフリをして、いつも家族を暖かい眼差しで見ている母を演じた、浦辺粂子が素晴らしい。

人の歩く様で、その感情や生き様を描く、天才成瀬の演出。

久しぶりの盆の帰郷の為、歩く次女と末娘が合流し、精霊流しを経て、有名なクライマックスの、森雅之と京マチ子の凄まじい喧嘩。その後、元の道を去る二人。行きとは違う想いを胸に、見送る母と、二人の後ろ姿。

それでも家族なんだ。また次も帰ってくるだろうという思いを込めて、素晴らしいラストシーンであった。
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