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バイオハザードのnetfilmsのレビュー・感想・評価

バイオハザード(2002年製作の映画)
3.7
 近未来のアメリカ、ラクーンシティ郊外に位置するアンブレラ社の地下研究所「ハイブ」では今日も数百人の社員が日夜仕事に励んでいた。アンブレラ社は全米No.1の複合企業であり、アメリカでの家庭用医薬品シェア率90%以上を誇る巨大企業だった。だが研究中の生物兵器T-ウイルスが何者かの手によって施設内に漏洩するバイオハザードが発生。堅牢なセキュリティ・システムに外部からの侵入など起こるはずがないとタカをくくっていた社員たちは当初、作動した警報機を訓練か何かだと勘違いする。無人の部屋に厳重に管理してあった謎の生物兵器T-ウイルスの液体が染み出し、通気口などの空調設備を通じて、各部署に拡がる様子は恐ろしい。かくして外部へのウイルス漏出を防ぐため、ハイブのメインコンピュータ「レッド・クイーン」は所内の各区画を封鎖して、消火剤であるハロンガスや、スプリンクラーの水を大量に散布し、約500名を超える所員全員が危機に陥っていた。一方その頃、地上にある洋館のバスタブにはアリスという名の女(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が眠っていた。目覚めるが彼女は何も思い出せず、ロックされた銃の隠し場所を開けて唖然とする。全裸に服を羽織り、建物の外に出た女は、只事ではない気配を瞬時に感じ取る。飛び立つ鳥の大群、風に揺れる枯葉、女は無我夢中で「誰かいるの?」と叫ぶが姿は見えない。何も思い出せぬまま彷徨うアリスは、突然謎の男性マット・アディソン(エリック・メビウス)に抱きかかえられ、次いで突入してきた特殊部隊によって2人共拘束されてしまう。

 『バイオハザード』シリーズの記念すべき第1作目。アンブレラ社は表向きは優良企業であり、500数名の社員はアンブレラ社の恐るべき陰謀など知る由もなく、仕事に励む最中事件は起こる。全ての空間がロックされ、エレヴェーター内に多数の人間が取り残される様子は純然たるパニック映画の様相を呈す。逃げ惑う人々の地獄絵図、複数の男たちの腕力を持ってしても、逃げ切れない状況を監視カメラのモニターだけが不気味に逐一監視している。結果として、500名以上の社員を抱える地下研究所「ハイブ」の秘密を知る者は全滅の憂き目に遭う。人々の地獄のような叫び声がこだまする中、衆人環視システム内には冷ややかに状況の推移を見つめている「誰か」が存在する。その危機的な状況の中で、記憶喪失のアリスは「ハイブ」内部に侵入することになる。さながら「レッド・クイーン」は『鏡の国のアリス』のレッド・クイーンであり、『エイリアン』シリーズの宇宙貨物船ノストロモ号の「マザー」のようにも思える。地上戦に臨む彼らも同じくアンブレラ社の恐るべき陰謀など知る由もなく、特殊任務を受け、「ハイブ」に乗り込んで来た。アンブレラ社特殊部隊隊長ジェームス・P・シェイド以下、名うての民間特攻部隊に配属されたメンバーは戦場の最前線に送り込まれた尖兵のように気高く、勇敢に物事に立ち向かう術を心得ている。当初、彼らの捕虜となったアリスやマット、スペンサー・パークス(ジェームズ・ピュアフォイ)らは部隊を頼りにしながら、「ハイブ」社の中枢へと徐々に歩みを進める。しかし彼らの前には想像だにしない試練が待ち構えていた。

 前半のパニック映画の模範のような展開から、中盤以降ジョージ・A・ロメロのゾンビ映画のような活劇に転じるポール・W・S・アンダーソンのB級感溢れるアイデアが素晴らしい。当初、容易い任務に思われた戦闘部隊の人員が次々に犠牲になる展開は、リドリー・スコットからジェームズ・キャメロンへバトンを繋いだA級大作である『エイリアン』シリーズの強い影響下にある。『エイリアン』はその名の通り、エイリアンが次々に主人公たち一行を襲ったが、今作では数々のゾンビやケルベロスたちが彼らに襲いかかるが、肝心要の黒幕となる衆人環視システムの監視者は姿を現さない。チャド・カプラン(マーティン・クルーズ)やJ.D.サリナス(パスクエール・アリアルディ)ら男性陣が及び腰になる中、アリス・アバーナシー同様に男勝りな性格で任務に励むレイン・オカンボ(ミシェル・ロドリゲス)が印象に残る。神経ガスにより記憶喪失になったヒロインは、スペンサー・パークスやマット・アディソン、彼女の妹を媒介として、記憶が少しずつフラッシュ・バック(より戻し)していく。この点で言えば『ジェイソン・ボーン』シリーズの主人公にも近い。レインとアリスを中心に女性たちが奮起する様子はジェニット・ゴールドスタインとシガニー・ウィーバーが男勝りな活躍を見せたジェームズ・キャメロンの『エイリアン2』と同工異曲の様相を呈する。ゲーム映画と聞いて二の足を踏んでしまった諸兄も、ジェームズ・キャメロンの『エイリアン2』が好きならば観ておいて損はない。猛々しい女性のイメージはシガニー・ウィーバーやリンダ・ハミルトンから、ミラ・ジョヴォヴィッチへと継承されていった。
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