三隅炎雄

宇宙からの脱出の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

宇宙からの脱出(1969年製作の映画)
4.1
情緒的表現から距離を置いた硬質で客観的な文体で、帰還不能の宇宙船乗組員救出作業をリアルに描いていく。音楽は殆どなく、ヒーローと呼べる人間は一人も出てこない。勇敢な英雄的人物も最後の最後でお手柄を横から奪われてしまうし、救出作業成功の熱狂もカメラはあくまで冷静に眺め続ける。講談調とも呼ばれたスタージェスの反対側にある禁欲的な語り口、国家的事業の政治的思惑も含めて描いて、映画全体のこの体温の低さは貴重だ。これは再評価されるべき作品だと思う。秀作。
三隅炎雄

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