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ジョン・レノン,ニューヨークのvioletのレビュー・感想・評価

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強制退去を食らっても負けじと留まり続けた、愛してやまなかった街ニューヨークで撃たれ、命を落とすという皮肉な運命。生前よくシニカルなジョークを飛ばしていたジョンのキャラクターとも重なっていて、どこまでも辛辣だなと思った。

<ラブ&ピース>
カウンターカルチャーの体現者であるジョンレノン、彼の人生を語る上で切っても切り離せないのが反戦運動。All You Need Is LoveやImagineの歌詞は、理想的すぎると批判されることもしばしばだけど、そういった夢想家的な考え方も時には必要な気がする。絶望の末にある逃げ道なんだよきっと。平和運動におけるジョンレノンの功績は、「自国の政治への不満や世界情勢に対する不安をもつ人々へ、音楽という形のユートピアを提供したこと」それに限ると思う。

<オノヨーコ>
別居期間中に、秘書のMay Pangをジョンに宛がったという話は聞いたことがあったけど、当時のことを振り返るヨーコ本人の話を聞いて改めて「やっぱりこの人ただ者じゃないな」と思った(笑)依存し合ってると言いながら、愛人を紹介した上で突き放すなんて… そんなこと、普通の女はできません! 本人曰く、ジョンは数週間で自分の元に戻ってくるだろうと思ってLAに送り出したらしいけど、予想に反してジョンは全然戻ってこず。それでも冷静に待ち続けたヨーコの器の大きさに感服です。

<主夫レノン>
息子ショーンの誕生で、ジョンの父性が溢れ出る。お絵かきしながらWith A Little Help From My Friendsを歌うショーンの肉声に泣かされた。生まれてすぐの頃からビートルズをたくさん聴いて育ったんだなぁと思うと尊すぎる… シンシアとジュリアンのことを思うと少し複雑な気持ちにはなったけど…

音楽活動を中断して子育てに専念するジョンを、メディアは「見せかけの演技だ」と揶揄していたらしいけど、ジョンが今更そんな自分をよく見せるためだけの嘘をつくわけがないでしょ… ジョンとヨーコは裏表がなく、いつも自分たちのしたいことを自由にする人達。だからこそ批判もされるし、「アイツらヤバい」と言われたりもする。だけどそんなの気にしないのが彼らの凄いところ。特にヨーコはメンタルが強靭すぎる。少しでいいから分けていただきたい。

ショービズから離れて、家族と過ごした5年間は、ジョンの人生の中で一番安定していた期間だったんじゃないかな。ダブルファンタジーセッション中、ショーンに電話で「おやすみ」と言うことすらままならないシーンで、創作活動の壮絶さを思い知った。ミュージシャンって、我々一般人には到底想像できないレベルの苦悩を負ってるんだな。
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