シズヲ

月下の銃声のシズヲのレビュー・感想・評価

月下の銃声(1948年製作の映画)
3.2
雨夜で幕を開ける冒頭や仄暗い酒場での殴り合いなど、要所要所での陰影のコントラストが際立つ西部劇。夜間の撮影や照明などの構図が中々に決まっている。淡々とした緊張感を演出した話運びやロバート・ミッチャムのクールな佇まいも相俟って、時折ノワールの領域に片足を突っ込んでいる。

尤もロマンス要素などのお約束も押さえているので、基本的には娯楽西部劇の筋書きである。カウボーイと入植者の対立という題材は『シェーン』や『天国の門』など数々の西部劇で取り上げられているけど、本作は珍しく入植者側が悪役なのが面白い(黒幕がいるとはいえ)。

影を覗かせた雰囲気は嫌いではないけど、作中で描かれる緊張感があまり展開の抑揚に貢献できていないのは惜しい。ミッチャム演じる主人公も物語の途中までは曖昧な立ち位置であり、それほど能動的に事態へと関わらないので、映画自体のテンポが不足していた印象は否めない。全体的にグルーヴ感に欠けているので、内容としてはそれほど面白くはない。

とはいえ本作のノワール的な質感には独特の趣があって憎めない。モノクロの映像自体が作中のライティングの味になっている。牛の暴走や銃撃戦など、西部劇的なアクションも押さえられている。そして映画終盤、雪原というロケーションは西部劇としては中々に珍しいのでさりげなく印象的。馬に乗って雪景色の中を往く姿は『殺しが静かにやって来る』などを思い出す。
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