komo

ジョニーは戦場へ行ったのkomoのレビュー・感想・評価

ジョニーは戦場へ行った(1971年製作の映画)
-
戦争で命を落とすことはなかったものの、両手・両足・顔を失った青年の話。
今まで観た映画の中で最もきつく、レビューも控えていましたが、ひとつの区切りとして書きます。

このタイトルを観れば、どんな人でも『ジョニーという名の男の話だ』と想像するでしょう。
しかし本作の主人公の名前は”ジョー”です。
ジョニーというのは、第一次世界大戦において志願兵を募るキャッチコピーであった『ジョニーよ銃を取れ』から来ているのだそう。
銃を取った者の末路を描く作品としてこれほどまでに皮肉的なタイトルはありません。しかし原作者でもあり監督でもあるトランボは、本作の主人公の名前に関しては、最も皮肉を含ませられるであろう”ジョニー”にはしませんでした。
銃を取り、お国の求める”ジョニー”となったジョー。
でも彼はジョニーじゃない。ジョニーじゃないんです。
国や栄誉のためとは言っても、本当は望んで戦地に赴く人間なんかいない。残酷な綺麗事から目を醒ませ、と言われているようです。

触覚以外の感覚を失ったジョーは、病院のベッドで夢をみます。
かつての恋人が、何度も何度も「ジョー」と呼んでいる。彼女の響く声もまた、悪い夢から目を醒まして、と訴えて来ているかのようです。
すべてが夢であったらいいのに。
ジョーのみている夢はカラー映像。しかしベッドに横たわるジョーを映す俯瞰の映像はモノクロームです。その重い世界の方こそがジョーの現実です。

反戦映画としての価値が高い本作ですが、戦争の時代を生きていない自分も、この作品から学びを得なければならないと思います。
戦争によって盲目(それどころかほとんどの感覚を失っていますが)となったジョーが、盲目に戦争をしている人たちに、頭を枕に打ち付ける形で訴えかけます。
そして目が見え、戦争の脅威に晒されていない自分自身こそが、最も世の中に対し盲目なのでは?と身につまされました。

この映画を観た後は数日間激しく気落ちしました。正直もう二度と観たくありませんが、今では観ておいてよかったと思えます。
これを観た後、自分の日常が鮮やかに見えることは保証できます。
komo

komo