◉赤い金魚=◯◯◯◯◯
◉原題『Children of Heaven』
◉4人家族の長男である9歳の少年アリは、妹ザーラの靴を修理してもらった帰り道に、その靴をなくしてしまう。家賃を滞納してしまうほど家にはお金がなく、アリはこの事実を厳格な父親に言えないでいた…。
◉第71回アカデミー賞にて〔外国語映画賞〕にノミネートされた作品。
◉イラン映画は6作品目。お国柄かエンタメ寄りの作品は殆どない印象。本作もまた然り、心温まるヒューマンドラマの中にも、しっかり当時の社会制度や社会情勢を反映させていた(※映画を製作する上で検閲がかなり厳しいらしく、あえて子ども視点から社会的な部分を描いているという)。
◉少年アリの泣き顔が堪らなく愛おしい。アリにこの表情をされた日には、どんなに怒っている人でも、たちまち許してしまうに違いない。
◉88分と比較的短尺ではあるものの、見どころは満載。全体的に手に汗握る展開の連続で、終始画面に釘付け。靴を巡って様々な困難が待ち受けるも、それを乗り越えてゆく家族愛に胸を打たれ高評価。特に、物語終盤に待ち受ける、兄妹の行く末は感動必至。さらに、締め括りは良い意味で予想を裏切る形で着地しており、総じて無駄を極力切り詰めた上質なヒューマンドラマだった。
◉本作の時代背景は、イラン革命以前の独裁・弾圧政治が大きく関係しているとみられ、急速な改革に伴い貧富の差が拡大した事を示唆しているシーンが幾つか見受けられる。
【以下ネタバレ含む】
◉イランでは赤い金魚=「縁起の良いもの」「幸せの象徴」と考えられているという。また、赤色は「幸運」や「勇気」を意味するとのこと。妹想いのアリが必死で追い求めた運動靴は手に入らなかったものの、赤い金魚がアリの足に集まるラストは…つまりそういう事。むしろ、観客にその後(父親から靴をプレゼントされて喜ぶザーラと、喜ぶザーラを見て同じく喜ぶアリ)を想像させる粋な演出だったと言える。もちろん、自分自身、続きが気になりすぎて発狂しそうになったけど…。