リッキー

運動靴と赤い金魚のリッキーのレビュー・感想・評価

運動靴と赤い金魚(1997年製作の映画)
4.1
997本目。190409
私はイラン映画を初めて鑑賞しました。
本作の主人公は、裕福でない家庭で生活している兄妹です。
少年は、妹の傷んだ靴を修理に出しますが、修理が終わった靴を買い物の途中で紛失してしまいます。この兄妹は1足ずつしか靴を所有していなかったため、明日から登校できないと涙ぐむ妹。困った少年は男子と女子の授業時間が違うということを利用して、妹と靴を共用しようと考えます。
まず妹に自分の靴を履かせ、授業が終えると妹は駆け足で自宅に向かい、帰路の途中で少年が靴を受け取り、猛ダッシュで学校に向かいます。まるでリレー競技のような感じです。
このことは親には内緒なので、この取り決めをするやりとりは二人の筆談によって行われましたが、会話するよりも二人の心情がとても伝わりました。

偶然、妹は無くした靴を履いている女の子を学校で発見します。
下校時に彼女を追尾して、彼女が住む家を特定することができました。
兄といっしょに自宅を訪ねようとしますが、ドアから出てきた全盲の父と少女の姿を見て、声をかけるのを断念する姿が切なかったです。

ある日近隣の学校でのマラソン大会が控えていました。兄は興味がなく無関心でいたが、3位の副賞としてスポーツシューズであることを知り、副賞目当てで出場します。彼の計画通りに3着になって待望の靴を得ることはできるのでしょうか。

エンディングでは壮絶なマラソン大会後、いままで履いていた靴はボロボロで足も豆だらけです。疲れ切って中庭の池に火照った足を冷やしますが、金魚たちが優しく足のまわりに集まってきます。
まるで疲れた兄の労を労うかのように。

この映画は、物を大切にする精神を思い出させてくれました。この兄妹のように壊れても修繕して長く大切に使用していれば、普段何気なく使用しているものに対しても愛おしく感じるようになります。

また、私にも靴にまつわる悲しいエピソードがあったことを思い出しました。
若いころに居酒屋で靴を盗まれました。若かった私は、当時やっと手に入れたエアジョーダンを自慢げに履いていましたが、閉店間際に店を出るころには私の靴は無くなっており、替わりに汚いスタンスミスだけが残されていました。当時人気があったモデルのため、履き間違えではなく、盗難に遭ったことは容易にわかりました。怒りよりも、誰のものかわからない汚い靴を履くしかない状況に陥った、惨めで気持ち悪い思いが甦りました。
でも本作と比較するとたいしたことはありませんね。
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