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三つ数えろのmのレビュー・感想・評価

三つ数えろ(1946年製作の映画)
4.9
イデオロギーを一切介さずに、力学でのみ語ることの歯切れの良さに震える。めちゃくちゃカッコいい。

温室の暑気で汗をかく、嘘をつく・恐怖で身体震える、そういった心境が体に与える現象でしか、物事を語らない。この人物が実は何を思っているのかとか、意味ありげに表情を映すことで感情を汲み取ってもらおうだとか、そういったまどろっこしさが一切ない。常に事実は現象のあとに、事後的に発生するとでもいうように、目眩くスピードでカットが切り替わり物事が起きる。
そのスペクタクルに、現代映画に足りないものをヒシヒシと感じる。

何より痺れるのは、別に感情に興味がないだとか、イデオロギーを持っていないだとか、そんなことは全くなくて、あくまで映画の規則に反するからしないということの保身の無さが死ぬほどかっこいい。

ドア・扉(時には窓)という唯一内と外を接続させるモチーフが与えるサスペンスや恐怖の使い方が物凄く良い。
ブローディがドアを開けた瞬間に、銃がチラリと見えカルメンが入ってくるシーンや、2回目に開けた時に撃たれるシーンは、顕著な例。開けた時に何が待ち構えているのかということだけでなく、ドアの前まで来て銃の攻防が始まったり、毒入りの酒を飲まされたハリーが倒れるタイミングは、カニーヌを追ってマーロウが外へ出ようとドアノブに手をかけた瞬間だったりと、開けるには何かが起きてしまうというフックが、うまく混在した時間をブロック分けさせていく。
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