Tully

マン・オン・ザ・ムーンのTullyのネタバレレビュー・内容・結末

マン・オン・ザ・ムーン(1999年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

アメリカで活躍した実在のコメディアン 「アンディ・カウフマン」 の生涯を描いたドラマ。カウフマンの芸風は独特だ。観客に笑いだけを提供するのではなく、驚きや悲しみ、怒りといったあらゆる感情を巻き起こすことを目的としている。普通の芸人だったら舞台上の自己と普段の自己をある程度使い分けるはずだがカウフマンは違う。私生活にもエンターテイナーとしての自己を持ち込み、人の感情を動かすためのネタで周囲を固めてしまうのだ。徹底的なプロ意識がそうさせているのだろうが、世間は次第にカウフマンに冷たい目を向け始め、身近な人間もカウフマンに不信の感情を持ち始める。観ている側はカウフマンの本当の姿が見えなくなってくる。カウフマンの数々の過激な芸の全てが意図された演出なのかどうかすら定かではないし、オンとオフの切り替えも判然としない。次第に過激さを強めていく芸に反比例する形で、カウフマンの素の人間性は小さく見えにくくなっていくのだ。カウフマンの人生はコメディアンとしての自己に支配されている。カウフマンの涙は、嘘で塗り固められたそれまでの自身の人生と、嘘では救いようのない残酷な現実を初めて悟った瞬間の涙だった。カウフマンに扮した 「ジム・キャリー」 の演技は圧巻で、カウフマンという人間にユーモア以上のペーソスを感じさせる。
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