何気ない日常をリズミカルなテンポと会話で軽快に綴る川島雄三監督流喜劇の完成形とも言える秀作、東宝時代のように役者に頼りすぎてアクを出すこともなく役者と物語がバランスよく存在しているのでひたすら心地よく映画を堪能することができた。
本作は芦川いづみの劇場デビュー作品として知られるが、演技は少したどたどしいけれど愛嬌のある顔立ちとスターとしてのオーラは既に発揮されていることに驚かされる。そんな彼女や北原三枝がのびのびと等身大的な魅力を発揮している本作を見るにつれ、女優の力を優しく引き出す演出力とダンディーな容姿をあわせ持っているのだから川島監督はそりゃモテるわと思わずにいられなかった(実際南田洋子は川島監督と結婚しようと強引に彼の住むアパートに押し掛けたというエピソードもある)。
舞台となる団地での主婦たちの会話とアヒルの鳴き声を重ね合わせるセンスのある演出が光る。