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天井桟敷の人々のbluebeanのレビュー・感想・評価

天井桟敷の人々(1945年製作の映画)
4.0
フランス映画史上の傑作とのことですが、納得です。舞台、衣装、演技など、全てにおいて洗練されていて完成度が高く、美しいです。特に男たちがガランスを口説く時のやりとりなんか、名台詞のオンパレードです。3時間もあって序盤はちょっと眠くなってしまいましたが、徐々にひきこまれて飽きずに最後まで鑑賞できました。

ガランスを演じたアルレッティは当時47歳で、さすがにビジュアル的にきびいという意見が多いようですが、個人的にはそこまで気にならなかったです。表情の作り方など、演技力で十分カバーしている印象。

劇中劇のシーンは、人間関係が現実とリンクする構成になっていてうまいです。バチスタのパントマイムも優雅で、ずっと見てられます。無言でパントマイムをするバチスタと、メタ構造劇で現実に引き戻すようなフレデリックの対照的な作風が、彼らの対称的なキャラクターを象徴していて面白いです。

多様な個性も持った男たちもガランスも、みんな嫉妬、孤独、後悔、プライド、などの人間くさい感情に満ちていて、多様でありながらも同じ人間であるというところが皮肉でした。特に、一見正反対のバチスタと古着屋が、バチスタは結婚しても結局は強い孤独感を感じていて、それが古着屋に対する同族嫌悪を生んでいるのではないかと。ナタリーはバチスタのことを良くわかってくれている最高の奥さんなのでその孤独感も思い込みなんじゃないかと思いますが、ガランスへの恋愛感情がそれを見えなくさせているのが悲しいです。
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