不在

天井桟敷の人々の不在のレビュー・感想・評価

天井桟敷の人々(1945年製作の映画)
4.8
言葉が無くとも人を楽しませる役者や、目が不自由でも見るべき物は見えている人。
それに反して、心にもない言葉を並べ、人を内面まで見ようとしない男。
第一部では、そういった人々が一つの愛を巡って対立する。
この段階では、大層な言葉を使わずとも愛を示す事の出来るバチストが優位に立つ。
しかし嫉妬や権力、富や名声などの様々なものが二人を遠ざけていく。

真に優れた映画は、セリフを消しても成り立つ。
言葉による演技がないサイレント時代の映画も、未だに色褪せることはない。
しかし本作のラストで、バチストは自分が無言劇で着用しているのと同じ格好をした、「白い男」に阻まれてしまう。
声なき者たちによって、愛を奪われるのだ。
だからこそ我々は心の声を叫ばなければならない。
サイレント映画の時代は終わった。
これからは言葉によって新たな時代を実現しようと、監督は民衆に語りかけるのだ。
不在

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