andes

天井桟敷の人々のandesのレビュー・感想・評価

天井桟敷の人々(1945年製作の映画)
4.0
「犯罪通り」で始まり、そして終わる。映画としてはパーソナルな問題を軸にした群像劇なのだが、妙に民衆や市井の人々を意識する。ラストシーンは、極めて個人的な物語が、映像的に群衆に埋没していく。天井桟敷の人々=観客にとっては、この物語は「悲劇」であり「喜劇」なのである。
3時間に及ぶ大作であるが、短いとすら思える。バチストをはじめ魅力的なキャラが多いので、「もう少し結末が見たい」という欲求に駆られる。それぞれの愛に翻弄されながら演劇を通じて絡み合うストーリーはダイナミックである。バチストの無声劇は息を呑む素晴らしさ。
演出も良い。極力、説明台詞を避け、場合によっては描写も省く(モントレー伯の殺害など)。映画は見せないことでも創造力を喚起するのだ(無駄にクローズアップを使用しないのも良い)。
当時人物たちは皆、ハーピーエンドとは言い難い結末を迎えるが、不思議と人間讃歌のような印象を受ける。恐らく1回の鑑賞では本作の魅力を受けとめることはできないのだろう。濃密であることはわかる。自身の未熟さを思い知る映画でもある。
andes

andes