アニマル泉

男女の戦のアニマル泉のレビュー・感想・評価

男女の戦(1928年製作の映画)
4.5
グリフィスの艶笑譚。参りました。不倫が起こす家族の騒動を横綱相撲で描いている。「足」が強調される。トップカットから美容院のマリー(フィリス・ヘイヴァー)の足だ。ネズミがマリーの足を登って大騒ぎになるのは驚いた。マリーの情夫ベイブ(ドン・アルバラード)が人形の取れた足を弄び、そこへマリーが自分の足を投げ出す場面も凄い。ラストはマリーはベイブから小切手を盗んで太腿のガータに隠す。この時代の女性のセックスアピールは足だったことが判る。よく寝そべる映画でもある。マリーはジャスドン(ジーン・ハーショルト)を誘惑しようとダイエットしたり水着になってやたら床に寝そべるのが可笑しい。
本作は会ってはいけない人達がすれ違ったり、隠れたりするのだが、必ずバレてしまう。マリーと密会するジャスドンと家族のダンスホールの鉢合わせ、マリーの部屋でのジャスドンとベイブの鉢合わせ、ジャスドンと娘ルース(サリー・オニールー)の鉢合わせだ。ベイブが隠れているのはステッキでバレる。隠れているルースのカーテンごしのアップ、そして拳銃!
グリフィスはフルショットが素晴らしい。室内のフルショットはいまならば手前に何か引っかけて撮るのだが、グリフィスはシンプルにそのまま撮る、それが新鮮だ。
グリフィスは横顔がいい。夫との新婚時代の写真を見上げるジャスドン夫人(ベル・ベネット)の横顔がいい。夫人は結婚指輪を見る。ここで指輪をもらった回想が入る。回想の手法が既に活用されているのに驚く。オーバーラップ(OL)も使いこなされている。冒頭、夫人の誕生日プレゼントを次々開けるカットが同ポジションでOLされる。省略のOLだ。マリーがジャスドンを誘い込もうと思案するカットもOLされる。妄想のOLだ。
夫人が屋上から自殺しようとする場面が面白い。真俯瞰で高さを表現して、地上落下する見た目のイメージカットがインサートされる。
サイレント映画だが音で誘惑するのが興味深い。ジャスドンはマリーに歌とピアノとダンスで誘惑される。すぐれたサイレント映画は音が聞こえるようだ。逆説的だが音が重要なのである
ユナイテッドアーチスト 白黒サイレント
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