Jeffrey

アメリカの戦慄のJeffreyのレビュー・感想・評価

アメリカの戦慄(1955年製作の映画)
3.8
「アメリカの戦慄」

冒頭、1947年6月、サンジュノの町。 バス釣りの夜のプライベートビーチ、悲鳴、パーティー、参加者、白人の少女、メキシコ系の少年、州立大学の法学部講師、就職活動、弁護士、別荘、判事、寄付、共産主義者、寄付金。今、人種問、政治問題が絡み合った裁判が始まる…本作は一昔前に同じくシネマライブラリーから円盤化され購入して鑑賞した「暴力教室」と同系統の作品として有名だったが、こちらもようやく国内で初DVD化され初鑑賞したが素晴らしかった。

戦後の青少年犯罪の一面とそれをめぐる社会不安を追及したドン・M・マンキーウィッツの原作を彼自身が脚色し、マーク・ロブソンが監督した1955年のモノクロ映画だ。まず、 ヒューマニズムと共産主義の対立をテーマにした反共映画って事に気づいた時にはテンション上がる。


さて、物語はプライベートビーチでの白人の少女が殺害された事により、犯人としてメキシコ人少年チャベスが逮捕された。充分な証拠が無いにもかかわらず、検察側は死刑にしようとする。人種偏見を嫌う法律学者が少年を救おうと努力するが、その学者をたきつけている弁護士には別の思惑があった。やがて、共産主義の寄付金集めにも参加してしまった主人公のデイビットが怒りに身をまかせ始めていく。そして黒人判事の男との論戦やバーニーとの戦いなどが写し出されていく。


本作は冒頭からビレッジビーチの風景から始まる。バス釣りの夜のパーティーを楽しむ人々、砂浜に寝転ぶ男女の姿、そうすると助けてくれとの少年の声が鳴り響く。野次馬が集まり倒れている1人の白人の少女を見つける。そこで警察官がその場に立っていたメキシコ系の少年の肩を強く持つ。そこで戦慄の音楽と共にタイトルロゴが出現し物語が始まる。

続いて、州立大学の描写へ。そこにはこの作品の主人公デイビットの姿がある。彼はどうやら実務経験がないがために契約が更新されず、求職活動をしているようだ。そしてバーニーと言う弁護士に冒頭で起こったビーチでの殺人事件をデイビットに担当させる。彼は喜ぶ。ここでカメラは一旦フェイドアウトする。


続いて、少女を殺した罪に問われているメキシコ系の少年がバーニーに尋問されている描写へと変わる。彼の名はチャベス。どうやって殺したなど様々な理由を聞かれるが、彼は母に誓って行っていないことを伝える。彼女を抱いたら彼女が逃げてそのまま倒れたと言い張る。側にいる彼の母親は泣きながら息子を弁護する。そしてデビットが俺が話すといい少年と話し始める。彼はドリンクを飲んだかと少年に聞くが少年は飲んでいないと答える。ここで様々な重要な事が話される。


続いて、バーニーは口答えしたチャベスを暴力的に叩く。それを必死に止めようとする母親に対し半ば脅しのような権力行使をする。続いて、死んでしまった少女の両親が悲しむ場面へと変わる。母親は火葬してあげたいと言うが、夫は愛しの娘を灰になんかにしたくないと泣き崩れる。

シーンは墓場と変わり、関係者が続々と訪れる。ここでは皆が祈り始める。ここで差別主義者の男性がスピーチをする(まとえてるようなスピーチにも感じてしまう)。画面は変わり、事務所前では数百人のデモ隊が押しかけており、軍が到着するまで彼らが必死に抵抗する。どうやら白人の少女を殺したチャベスに対しての住民の怒りが集まったようだ。バーニーは母親に対し息子を助けてやるから私の言う通りにしろと聖書を彼女にかざし、その上に手を貸せる。

続いて、住人の1人がニトログリセリンを持ち出し、爆発させようとするが事務所の屋上から関係者が拳銃で脅し会話をする。必ず少年を法に乗っ取らせ死刑にすると言う。それを聞いた彼らは一旦自宅へと帰り何とか暴動は止まる。そしてチャベスの母親はバーニーの別荘に行くために飛行機に乗る。カットが変わり、大自然の川が写し出される。そこの寝室にはデイビットが読書する姿、アビーがタイプライターを打っている姿がある。


そしてついに、チャベスの弁護が始まる(判事はアフリカ系アメリカ人)。12人の陪審員が聳え立ち、弁護を担当するデイビットの姿とパートナーであるアニーが少年の左右に隣に座っている。そしてチャベスのために寄付金を募るバーニーが体育館のような所を借りて大勢の人々に演説する。ここはエンジェル・チャベス基金となる。

続いて、スピーチ原稿が完成する。だがこの原稿に対してデイビットが気に入らないようだ。だが、彼は大勢の人々の前で演説する。しかし、彼は目の前にいる人々が共産主義と言うことで批判しようとしたが、とっさにマイクをとられてしまい、バーニーが代わりにスピーチをする。デビットはそれに対して怒る。

続いて、カメラは裁判している風景に変わる。そして物語も佳境に入りクライマックスを迎える…と簡単に説明するとこんな感じで、なかなか面白い映画だったが、タイトルの「戦慄のアメリカ」って言うほど戦慄はしていない正直言って。だけど、法定映画好きな自分にとってはなかなか緊張感があり、ドラマ性も強くて良かった。なんだかバランスが非常に取れてるし。


この映画の凄いところはチャベスをさっさと犯人に仕立てて終わらせたいと言うバーニーの思惑もあるが、もし彼が住民にリンチ何かされて殺されたらこの街のイメージがガタ落ちだと言ってなんとしてでも守らなくてはならないと言うジレンマに襲われる。それにしたって当時は黒人差別をテーマにした作品が山のようにあったが、ここで少し風変わりなメキシコ系の差別に取り組んだ感覚は非常に面白い。

あの大演説する大きな会場でのエキストラの数の多さに圧倒される。そしてものすごい衝撃的な終わり方をするって言うわけではないが、唐突に 幕切するクライマックスもなかなか良かった。
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