slow

かいじゅうたちのいるところのslowのレビュー・感想・評価

-
素直じゃなかった。わたしは考えを本当の本当に吐き出せる子供じゃなかった。感情のまま、世界を引き裂かんばかりにNOとはっきり意思を示せる子供じゃなかった。泣きもせず、叫きもせず、そういう意味では手のかからない子供だった。でもそれは、最も手のかかる子供でもあった。わかっていた。本当は、どう表せばいいか、わからないだけだったのに。小学生の頃、ある学期末に返された通知表の備考欄に、思慮深いと書かれたことがあった。なるほど、とはならなくても、意味は何となくわかった。それはその通りで、そう言い表してくれた先生がわたしは好きだった。学年が上がり、卒業して、何年か後に、学校を訪れた時に名前を覚えていてくれたのもその先生だけだった。いつ思い出してもいいように。いつ忘れてもおかしくないから。わたしからしたら、マックスの焦ったさや悩み方がちょっと、羨ましくもある。そういうことか。
slow

slow