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レクイエム・フォー・ドリームのmのレビュー・感想・評価

4.0
人はみな、幸せを願っている。
ただ只管にそれだけなんだと思ってしまう作品。
それでも生きていくしかない。

ダーレン・アロノフスキー監督が今敏監督を溺愛しリスペクトしているのがリアルに分かり凄く嬉しかった。
オマージュだけでなく、ラストの畳み掛ける映像の切り替えなど随所に今さんを感じた。
それだけで幸せだった。

登場するすべての人間が人生に少しだけ不満を抱き、そこから脱したいともがいている。
こんなはずじゃなかった…、もっとこうしたかった、負の連鎖は断ち切れなく盲目になっていってしまう。
その糸口が薬物、というものだった。

日常にひっそりと影を潜めているこの感覚。
薬物に手を染めてしまう取っ掛かりは誰にだってあって、明日は我が身、未来で薬物に手を染めない保証はないと思ってしまう。

小さなベッドで一人孤独に戦う2人。
夢を捨て切れず夢うつつの状態でベッドに入る1人。
自身が欲した物を手に入れて笑みを浮かべながら眠る1人。
どの人物も幸福を夢見て、転落した。

どれだけ堕ちても助けてくれる人はいない。
それでも一人で生きていくしかない。
自分の人生の舵は自分で取るしかない。
そんな事を思った。

ジャレッド・レトさんの青白さと細さが本当にヤク中って感じでよかった。
ジェニファー・コネリーさん演じたマリオンの美しさ、また化粧しながら泣く彼女に胸を締め付けられた。
ハリーとマリオンの薄氷のような関係性、薬物をクッションにした関係が脆く崩れさっていく様が見事。
人間臭さを感じる。

映像の使い方もキャッチーで、楽しい音がより今作の悲惨さを物語る。
あのキュッ、ポン、ジュ、という音が忘れられない。

息子(ハリー)と喧嘩した後、なにごともなかったように送り出す母(サラ)
ハリーが居なくなった後の部屋に取り残された彼女の姿に震えた。

ストーリー : ★★★★☆
映像 : ★★★★★
設定 : ★★★★☆
キャスト: ★★★☆☆
メッセージ性 : ★★★★☆
感情移入・共感 : ★★☆☆☆
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