Hiroki

奇跡のHirokiのレビュー・感想・評価

奇跡(2011年製作の映画)
3.9
気づけば2023カンヌも前半戦が終わる。
全然予習してないどうしよう。
ここから巻き返せねば。
思えば注目監督は後半に多いもんね...
と言う事でまずはカンヌ情報から。
今作とは関係ないので興味ない方は大幅に飛ばしてください。

まずマイウェン&ジョニデのオープニングから!問題児タッグの今作は予想通りというか相当炎上していたようです。出来に関しても...
さらにインディー・ジョーンズ最新作でハリソン・フォード&マッツ・ミケルセン!ハリソン・フォードは名誉パルムドール受賞。
こちらはコンペ招待を拒否したマーティン・スコセッシ『Killers of the Flower Moon』でレオ&デニーロ!9分間のスタンディングオベーション。
さらに最近引退を示唆したケイト・ブランシェットや最新オスカー女優ミシェル・ヨーなどなど、目も眩むようなスターによるレッドカーペットが連日続いております。

ちなみにコンペはといいますと、批評家による星取表ではジョナサン・グレイザー『The Zone of Interest』とジュスティーヌ・トリエ『Anatomie d'une chute』、ワン・ビンのドキュメンタリー『Youth (Spring)』が高評価!
特にジョナサン・グレイザーはかなり大絶賛の嵐のよう。気になる..

そして我らが是枝裕和『怪物』ですが評価は...まずまずのようですね。
ある星取表では5つ星中3.09(10人中6位)、別の星取表では4つ星中2.3(10人中5位タイ)みたいな感じです。
まー賞レースの常として後半に出てくるほど有利で、是枝さん今回1番最初の登場だったので厳しいのは厳しい。
ただいつも言う通り批評家と審査員(監督や役者)の評価軸というのはかなり違うので、まだまだ可能性は残されております!


と言う事で長くなりましたが今作はサン・セバスティアン国際映画祭の最優秀脚本賞作品で、是枝監督には珍しい九州新幹線開通に伴い企画された JRとの企画モノ。
ただJR側からほとんど制約は受けなかったとの事で自由に作れたようです。
キャスト的には常連の樹木希林、阿部寛、夏川結衣、橋爪功と盤石の体制。
そして子役として橋本環奈、平祐奈、内田伽羅も登場。

内容的には両親の離婚により福岡と鹿児島で離れ離れになった兄弟が九州新幹線開通と共に中間地点の熊本で会おうとする物語。
もう少し詳しく話すと、兄の航一(前田航基)が学校で九州新幹線が初めて上りと下りですれ違う時にとんでもないパワーが生じて奇跡が起こりなんでも願い事が叶うという噂を聞く。そこで彼は弟・龍之介(前田旺志郎)と共に両親ともう一度一緒に暮らせるようにその瞬間を目指す。
これタイトル『奇跡』なんだけど英題が『I WISH』で「願い」とか「祈り」みたいなイメージなのはそのため。

子供が主役の話なので基本的に荒唐無稽の連続でほのぼの笑顔で眺めているお話だと思うんだけど、その中にたまーに大人の厳しい現実みたいな要素がつきつけられるんですよ。
そんな中をメインの兄弟をはじめ子供たちが軽やかに瑞々しく生きていく姿が本当に素敵。

是枝監督は子供には脚本を見せずにその場その場で演出していくやり方なので、子供が本当に生き生きと動いている。
特におそらくフリーなんだろうなーという子供たちでわちゃわちゃしているようなシーンは素晴らしい。
逆にある程度セリフや演技が決まっているのだろうなーというシーンでは拙さも目立ってしまっていたかな。この作品は出演している子供が多くて、子供だけのシーンも多々あったので。
ちなみに子供たちがそれぞれ「奇跡」について語るシーンはアドリブで周囲の友人たちに質問させて撮るという形だったみたいです。
あそこだけ異常にドキュメンタリー感あったもんな...さすがドキュメンタリー出身監督という感じ。

意図してないはずだけど2011年の6月11日公開というのも。

何も起きないある家族の話という是枝作品の中では、明るくファミリー向けで子供や家族と一緒に観ると良い作品かなー。
ただ全体的な彼の作品群からすると少し質量が足りないかもしれない。
まさに“かるかん”という感じでそれもまた意図されているのか。

さて今回のコンペ作『怪物』もまた子供が主役の物語。
是枝さんは今年のコンペ監督では唯一の昨年から連続してのコンペ参加。
そして脚本が坂元裕二で、是枝さんがデビュー作以来の脚本を自分で書かない作品。
さらに音楽は坂本龍一で今作が遺作に。
話題性は抜群なだけにどーなるでしょうか!

2023-34
Hiroki

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