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望郷のmhのレビュー・感想・評価

望郷(1982年製作の映画)
5.0
南ベトナム・ダナンに生きる庶民を題材にした香港の反共映画。アンディ・ラウのデビュー作。
ベトナム戦争に勝利した戦車パレードを、クレーン撮影するという大掛かりなシーンからスタート。
ベトナム・ダナンの現状がとんでもなくひどくて、さまざまな戦争映画を見てきたおれでもドン引きするレベル。
・北朝鮮と同じく、案内人(文化局の役人)がつく取材。
・庶民は外国人と関わることが禁止されている。
・反動分子は新経済区に送られる。
・新経済区では地雷除去を含む強制労働が待っている。
・外国人ジャーナリスト向けの、取材用新経済区も用意されてる。
・町中で公開処刑が行われている。
・反動分子の虐殺が行われている。
・児童買春、未成年犯罪が行われている。
これらが次々登場して、心がきしむ。
気にかけていた少女が悪びれる様子もなく体を売ってくるのは、「タクシードライバー」でも採用していたいにしえの鉄板プロット。
いまでいう北朝鮮も同然の状況。つまり、共産主義が主権を握るとこういうふうになるってことを、返還前の香港の知識層、映画人たちは早々に見抜いてる。
ベトナム共産党が支配する絶望的な社会を描くことで、返還後は気をつけろと警鐘を鳴らしている。
もちろん中国では上映禁止なので、いまの香港ではこの映画を見ることはできないという状況含めて、おそロシア。
日本でも中国への忖度でそろそろ見られなくなりそうな気もしますので、興味のあるひとは早めに見といたほうがいいと思いました。
ハッピーエンドと思わせて、ラストもとんでもなかった。
なんだかんだで反共映画って少ないんで、そんな意味でも貴重でした。
これはめちゃくちゃおもしろかったです。
mh

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