イチロヲ

虎鮫のイチロヲのレビュー・感想・評価

虎鮫(1932年製作の映画)
4.0
サメの襲撃により片手を失った船長が、憔悴状態に陥っている元乗組員の娘を救済する。アウトローの人間讃歌を描いている、ヒューマン・ドラマ。

サメに片手をパックンチョされてしまい、鉤爪を付けることになった船長が、マグロ漁船の指揮を執りながら、恋愛下手を克服していく。"悪意のない無邪気な嘘"をつくことで虚栄心を保たせている人間が、上昇と下降を実体験していくドラマとなっている。

恋愛弱者の船長が、元乗組員の娘と結婚するのだが、船上で信頼関係を築いている同僚が、嫁の本命の彼氏であり、どうのこうのという泥沼劇場。嫁、彼氏ともに、船長をリスペクトしながら、三角関係の葛藤を繰り広げるところが醍醐味となる。

「どんなに向上心を奮い起こしても、ダメな人はやっぱりダメ」という現実を叩き込まれると同時に、深い慈しみの心を分け与えてくれる作品。本物のサメを利用したダイナミックな映像が収められているため、元祖「サメ映画」と言っても過言ではない。
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