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巨人と玩具のayのレビュー・感想・評価

巨人と玩具(1958年製作の映画)
3.5
50年代後半の作品と思えないモダンさ。所得倍増計画が1960年。時代の勢いを突きつめたシュールな風刺コメディ。

ディテールのつくりこみ、構築的グラフィック的な美術のこだわりようがはんぱなくて、メイン舞台の玩具メーカー広告部のビジュアルのハマり具合ひとつひとつは眺めて飽きない。プロダクションデザインの超完璧主義だけじゃなくて、すべてをコントロールしたいという監督の意志のはたらきが、場面場面に満ち満ちてる。決め絵を優先してるから、役者がみな誇張された演技で人体の動きはぎこちない。キャラクターとして動かされてる感じが強く出る。村井博の撮影による監督の眼と同化したカメラの、矢継ぎ早に画面が切り替わるオリジナルな躍動感。

増村保造の作風は主観的で独創的でエッジが効いてる。作品のなかの世界はどこか浮世離れしてて時間も空間もねじれ過ぎていく。目にみえない力学と構造についての感覚がとても鋭くて、本作では資本に翻弄される人たちを巨人と玩具に見立て、社会の運命と物語の語られかたに関連性をもたせてる。その明晰さ、先駆性。
よくいえば映画への崇高なこだわりへの挑戦なのだけれど、奇妙に規律を持った半ば狂気の群像のコミカルな表現には、監督自身のエゴイスティックな部分もちらちらみえて、再現のむずかしさをいろんな意味で感じた。
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