Ricola

巨人と玩具のRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

巨人と玩具(1958年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

巨大お菓子メーカーの勝ち抜き戦略とそれにまんまと踊らされる人々。
「現代の人間は考えないんです」
だからこそ、テレビや新聞、宣伝カーなどの生活圏内に宣伝を大量に流し人々の脳内に刷り込ませることに企業は躍起になる。
大衆を操作するはずが、自分たちまでどんどん狂っていく宣伝マンたち…。

デフォルメされたキャラクターたちやが怒涛のように駆け巡る。エネルギッシュかつ大胆に資本主義社会へ疑問を投げかける増村監督の姿勢はさすがである。


カチカチとライターがなかなか点かないという身振りから、場面が転換するという演出が何度か見られる。
カチカチ音は考えを頭に巡らせている音を表現しているようだ。
キャラメルが工場で作られ、売られ、子どもたちに届くまでの光景や、京子の宣伝写真が撮られる様子からどんどん彼女自身が売れていくまでの過程などが、映し出される。

元気でお転婆な、タクシー会社に勤める舌をペロッと出すのが癖な少女。ちょっと垢抜けないかもしれないけれど、それが個性になっていていい。つまり世間に染まっていないということ。だからこそ、宣伝キャラクターに起用されたのだろう。京子はオタマジャクシを飼って大事にしていたが、ただ「オタマジャクシはカエルの子」と言う通り、全く違う姿に成長するオタマジャクシのように、京子も変わっていく。
彼女がピューッと逃げ出したら、車がぶつかり運転手同士が揉めだしてさらには渋滞が発生して一気に混乱が巻き起こる。京子の影響力の強さを示している。

「食うか食わされるか、騙すか騙されるか、そんな時代を生きてるんだ」
「お前は夢を見てるのか?ここは日本だぞ。無意味でも非人間的でもとにかく遮二無二働かなければ食えない日本だぞ」
あれ…これって高度経済成長期の日本のはずであるが、それから60年以上経った現在でもそのスタンスはそこまで変わらないのではないだろうか。

競争社会に蝕まれて狂ってしまった者、バカにされながらも脱落することを自ら選んだ者、これから地獄が待ち構えているとわかっていてもそこで生きることを選んだ者…。巨大企業を動かしているようで1番操作されているのはそこにいる彼らなのである。
Ricola

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