不在

華氏451の不在のレビュー・感想・評価

華氏451(1966年製作の映画)
4.0
全ての書物は焼却され、テレビからは洗脳番組が一日中垂れ流されている。
反知性を植え付けられ、政府の監視下で人々は平等かつ公平な暮らしをしていると思わされている。
これらはナチス・ドイツや文化大革命下の中国において、実際に行われていた事だ。
しかしこれは遠い歴史の出来事ではなく、今の我々にも当て嵌まるのではないか。

ソーシャルメディアに操られ、他人の意見や言葉を自分の物だと錯覚する。
短い時間でそれなりの満足を得られる仕組みによって、長い時間を要する映画や本は最早リスクと見做された。
SNSの台頭により様々な個性が生まれたと思いきや、気付けばみんな同じ物を着て、同じ物を観て、同じ物を食べている。
いまやおじさんと女子高生が同じ音楽を聴く時代となった。
加速するメディアは我々から個性や思考を奪い、全体主義を推し進めている。
その方が何かとコントロールしやすいからだ。

自分が好きとしている事は、本当に自分が好きな物なのか。
今自分が考えている事は、誰かの受け売りではないか。
どの時代においても、自分で感じ、自分で考える事の重要性は決して薄れないだろう。
不在

不在