なんて素敵な映画。ボロボロ泣いてしまった。悲しくてではなく、嬉しくて泣いた。優しくて、愛がたっぷりで泣いた。
町の人たちの温かさはもちろん素敵だけれど、ラースが決して支えられる側だけじゃないのもよかった。彼とビアンカが人々を繋げ、みんなの心に触れた。おばさまたちがガスとカリンを映画に送り出すのとか、完璧な脚本だなと思った。
「普通」になれない、欠けたところがあると感じた経験のある人には、たまらないほど刺さる作品じゃないかな。
普段生きていて、「話が通じる相手かどうか」としか表現できない感覚がある。言葉が届くか。心が通じるか。それは〈私が突然リアルドールを恋人だと紹介したとして(困ったり戸惑ったり時間がかかったりはしても結局は)そっか、そうなんやね、と受け止めてくれるかどうか〉に言い換えられるんじゃないかと思った。
ストーリーは全然違うけれど、現代版ファンタジーという意味で「ひよっこ」を思い出したなあ。
河合隼雄さんや泉谷閑示さんの著書もいくつか思い出した。バーマン医師の「精神の病は必ずしも病気とはかぎりません」って台詞とか。「病気」と「健常」はそんなにきっぱり分けられるものではないと私も思う。そして、その人にとっての現実が◯◯なら(たとえ側から見て事実と異なっていたとしても)それはその人にとっての真実なんよね。
この映画があくまで「コメディ」なのもいい。軽やかで、あったかかった。
最後まで「どうして」の部分がはっきりとは語られなかったのもすごくよかった。説明なんてできないし、それでいいのだと思う。
エンドロールでふと、もし世界中がこの町のようだったらどんなに、どんなに…… と思ってまた泣いた。少なくとも私は、この町の人のようにありたい。あれますように。