あーさん

ラースと、その彼女のあーさんのレビュー・感想・評価

ラースと、その彼女(2007年製作の映画)
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初っ端の音楽、そしてライアン・ゴズリング演じるラースを見た瞬間に、絶対良い映画だ!と直感した。

とにかく、ラースが極度にシャイで何かとこだわりが強いのだけれど、とてつもなく純粋で優しいのである。
ちょっと変?と思われがちな設定でも、脚本がとても素晴らしい為に、ラースの人柄を表すエピソードの積み重ねが、彼の周りの人々同様、どうしても彼を応援したくなるようにさせるのだ。。

"ラ・ラ・ランド"でもライアン・ゴズリングの物憂げな瞳にやられたが、今作の彼も瞳で訴えかけてくる。実は、とても繊細で難しい役。だけど、クールな役も優しい役も、今作のようにかなり個性的な役も、本当にそこにいるかのように演じられる、、さすが演技派だなぁ。。素晴らしい!
(特典映像を観ていると、周囲の彼への信頼度の高さを、改めて感じる→みんなライアンが大好き!)

生まれてすぐに母親と死に別れてしまった不幸な生い立ちゆえ、人との関係に少し支障をきたすが、決して暴力的ではなく、日常生活も自分でできるし、決まった仕事もしている心優しいラース。
ただ、親しく近づいてくる人(女性)に対してどう接していいかわからず、過剰に距離を置いてしまうということ以外は、特におかしい感じではないのだ。
同じ敷地に住むラースの兄ガス(ポール・シュナイダー)の妻カリン(エミリー・モーティマー)は人を遠ざけ、いつも一人でいる彼のことが心配で仕方ない。

そんな折、ラースが兄の家に連れて来たのは、等身大のリアル・ドール、ビアンカ。
人形相手にまるで本当の彼女のように接するラースに、周囲は戸惑いを隠せないのだが、、

何故、こんなことになってしまったのか?
兄は母親がいないのに早くに家を出て、父親とまだ小さかったラースの二人だけにしたせいだと自分を責める。ラースは自分のせいで母親が死んでしまったのだと思っている、と。
教会の人達も会社の同僚達も、最初は腫れ物に触るように接するが、ラースがビアンカを甲斐甲斐しく世話し、心から彼女を大切にしている様子を見て、やがて気持ちに変化が出てくる。。

ラースがジャズナンバーの"LOVE"を男女の声色を変えて歌うシーンとか、会社の新人の女の子マーゴ(ケリ・ガーナー)のテディベアを蘇生してあげるシーンとか、思わず笑ってしまう微笑ましいシーンが沢山!

この感じ、どこかで観たなぁ、、と思ったら少し前に観た"ブリグズビー・ベア"だ!!
実際は結構シリアスな状況なのに、主人公のキャラの純粋さ故に、ハートウォーミングな感じになっているところがよく似ている。"ブリグズビー"がお好きな方はハマれるんじゃないかな。。

彼を全面的に肯定してくれるドクター役に
パトリシア・クラークソン。今作に於けるこの人の存在は大きい。
母になれない悲しみをラースに伝えるシーンはとても印象的。

カリンは、なるべくラースに寄り添おうとするのだけれど(メリーポピンズ リターンズでは素敵なジェーンになっていたエミリー・モーティマーが好演!)、なかなか上手くいかない。
カリンの好意がラースは嬉しくないわけではないけれど、実は人から触れられることや近づかれるのが苦手なのだ。。
そして、彼は意外にも彼女の優しいともとれる行動が実はどこから来ているのか、本質を見抜いていた。これには、自分も思い当たる節があって驚いたなぁ…。母性の原点を見たかも!

人と人とはわかりあえないと思った方が楽なこともあるけれど、わかりあえるように想像力を働かせることの大切さを、今作は教えてくれる。

最後に出てきたクレジット。
"話すことをやめて静寂に身を委ねれば、私たちは何か理解できるかもしれない。"
by フェデリコ・フェリーニ

この言葉が、今作の全てを物語っているような気がした。


おかしいと決めてかかる前に、受け入れよう。
何故?とか誰がどうしたから、とか犯人探しもしない。ただ、受け入れるだけ。
そうすれば、時間はかかっても自ずと解決するものだ。。


また、とってもとっても素敵な作品に出会えたことが、心から嬉しい♡
あーさん

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