dieBananaSuki

スリープレスのdieBananaSukiのネタバレレビュー・内容・結末

スリープレス(2001年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

普通に面白かったよ。
展開が二転三転する脚本の出来は良く(伏線が異様に丁寧に張られていた)、それでいていつものアルジェント節も楽しめる。
だけど出来の良さはつまり手堅さであって、ゆえにアクのなさも感じられる。出来の良い作品も好きだけど個人的にはアルジェント作品には歪さを求めてしまうからこう思う。
でも面白いからいいか。
個人的には、中盤のオペラハウスのカーペットを舐めるように写しそこを歩く足を写し、タメにタメた後のバタバタとしながら浮く足、そして落ちる首のカットが素晴らしいと思う。オペラ座血の喝采の時もだけどアルジェントは重要なシーンでのフリオチのつけ方がうますぎる。このシーンでは殺人のインパクトを見せつつ、想定されていた犯人像に反する(字幕では小人と言われていたけど、その人ではおそらくバレリーナを持ち上げることは叶わないため)人物であることが明かされるのだが見せ方がうま過ぎてさすがは巨匠だと感嘆するばかりだ。
他にも、冒頭の電車のシーンなどは恐怖感や精神的な圧迫感を電車の暗さと照明と空間の狭さでリンクさせているところも流石だし、相変わらず劇伴がうるさくて最高だし、ラストのはじけ飛ぶ顔面のインパクトは狂気が溢れていてこれもまた最高で、終盤の忙しなさも妙な味わいがある。
一般的には全盛期を過ぎたと言われている頃の作品だけど、衰えても腕のある作家であることは本作を見れば明らかだろう(でもドラキュラは擁護できない出来だし腕すらも衰えたと思った。ジャッロじゃ無いからダメだったのかな)。