烙印0928

おかあさんの烙印0928のレビュー・感想・評価

おかあさん(1952年製作の映画)
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どんどん家族が死んでいき、家から人がいなくなるのが淡々と描かれていた。
兄→父→妹(本家への養子だが、それは死と類似したものだろう)
兄と父の場合は死に目を描かず、死ぬ前と死んだ後の状態や生活(墓参りに行く様子や、忌中など)を描くことで死を表している。
それにより、感傷が極力排された上で(ゼロではないが)、人の死が与える実生活上での影響というものがありありと示されていた。

加藤大介演じる捕虜のおじちゃんがこの一家に留まらなかった理由は、この家に死が刻印されていることが直感的にわかったからだろうか。それもそうである。兄→父→妹が死んだ後、母が死ぬのも時間の問題だからだ。家族を養うため一生懸命働き、姉が結婚か自立する頃に死ぬのは運命づけられているだろう。
その母の死は最終的に描かれない。感傷で物語を終わらせたくなかったからであろう。
 
映画の展開の緩急がとてもはっきりしていたのが印象的だった。
通常はゆったりしたリズムなのに拘らず、今川焼き→アイスキャンディーへカットが変わった瞬間に一瞬で季節が変わるし、前述のように家族の死に目を大きく省略する。また、妹の養子がまだまだ先と言った次のシーンでは、もう養子に出る1日前である。
このように時間感覚が映画の中で大きく変わるので、全くうかうかしていられない。
ホームドラマの体裁をとりながら、激動の時代であり、人の死を主題として扱っているが故に、このような緊張感があるのだろう。

印象的なカット・シーン
遊園地の場面
この映画では他にほとんどない移動撮影もされていることもあり、テンションが高いシーンであり、楽しげである。
しかし、翌日に妹の養子が控えていることから、死がはっきりと刻印されている。故に、楽しげに描かれる程に画面のがエロティックになる。
母が食事中に耐えきれずえづくカットも印象的である。
烙印0928

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