nt708

おかあさんのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

おかあさん(1952年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

成瀬巳喜男と水木洋子のコンビはやはりはずれが無い。本作を語るには「母は強し」この一言で充分。人生が喜劇であり、悲劇でもあることを静かに教えてくれるのが成瀬映画の素晴らしいところだろう。モンタージュとディゾルブ、、映像表現の基本中の基本と言われる技法を使って端正に仕上げた映像がどうしてここまで心を揺さぶるのか、未だに良く分からない。

子が親を思う気持ち。親が子を思う気持ち。それらは往々にしてぶつかるものだが、本作においてはお互いを思う気持ちに加えて、自分自身の幸せを考える気持ちも葛藤に加わるから観ていて苦しくなる。そのうえ、貧しさが彼らをさらに追い込むからなお苦しい。こうした苦しさを台詞を使わずに役者の演技や構図だけで表現してしまうのだから、私は成瀬を最も尊敬する映画監督として挙げないわけにはいかないのである。

彼のちょっと切なくて、優しくて、温かい映像は、彼の眼差しを映し出しているようで、、そういう映画を私はやはり撮りたくて仕方がないのだ。
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